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製品開発プロジェクト Project Story

「正常進化」の道は、選ばなかった。

あえて困難な道に挑んだ
「LE MANS V(ル・マン ファイブ)」誕生の舞台裏

「LE MANS V」は、2017年2月にリリースされたシリーズ最新モデル。スポーティで軽快な走行性は維持しながらも、乗心地のよさや静粛性を極限まで高めた性能が人気を博し、快進撃を続けている。スポーツタイヤの市場が年々縮小する中、なぜこれほどのヒットとなったのか。誕生の舞台裏には、あえて困難な課題に挑み、独創の技術を生み出した技術者たちのドラマがあった。

過去に前例のないコンセプト

1982年に初代のモデルがリリースされた「LE MANS」シリーズ。今では、「DUNLOP」ブランドを代表する主力製品のひとつに数えられる。「LE MANS V」は、その最新モデル。製品開発は、当初、歴代シリーズに代々受け継がれるスポーティで軽快な走りの性能をさらに高めた「正常進化」をコンセプトに始まった。だが若者のクルマ離れが進み、経済性を求める声や環境問題への関心が高まる今、果たしてそれで一般ユーザーの支持を集められるのか。社内で危惧する意見が出て、コンセプト案はいったん白紙に戻される。製品開発にあたるプロジェクトチームは、全国各地のタイヤ販売店を訪ね、売場の販売担当者から直接マーケット情報をヒアリングする地道な作業から再出発した。その結果明らかになったのは、タイヤに高い走行性能を求めるユーザーより、乗心地の良さや静粛性など快適性を求めるユーザーが圧倒的多数を占めるという事実だった。プロジェクトチームは、市場調査で集めたデータや現場の意見をさらに詳細に分析。当初案に代わる、新たなコンセプトを再度上申した。「乗れば誰もが実感できる快適な乗心地と静粛性を備え、『LE MANS』シリーズに受け継がれる走行性もバランスした次世代のタイヤ」。それは過去に前例のない、まったく新しいコンセプトだった。おぼろげだったイメージが具体的な目標へと変わり、製品化にむけた開発が本格的にスタートした。

SHINOBI TECHNOLOGY誕生

「乗れば実感できる快適性」——。言葉にするのは簡単だが、実現は極めて難しい。開発は、トライ&エラーの連続だった。最大のテーマはタイヤの振動抑制だ。乗り心地と静粛性(ノイズ)を悪化させる原因はタイヤの振動である。転動するタイヤが路面から衝撃を受け振動し、その振動がホイールから車体を経由して人に伝わる。人は低周波の振動を乗り心地、高周波の振動をノイズとして感じる。乗り心地と静粛性を良くするとは、すなわち路面からの衝撃によるタイヤ振動を抑制すること。そこでタイヤの踏面(トレッド面)が路面に中央部から徐々に接地し、タイヤへの衝撃が極力緩和されるよう、プロファイル(断面形状)に丸みを持たせた。またタイヤのサイドウォール(ロゴマークが刻印される横の部分)についても、全体で大きくたわんで路面からの衝撃を吸収するプロファイルを採用。さらにトレッドパターンは、路面の凹凸を包み込むしなやかな縦方向のブロック剛性を持たせながらハンドル操作にしっかり応答する横方向の剛性を合わせもつ左右非対称パターンを採用。これらの技術は、音を立てずに忍び寄る「忍者」をイメージして「SHINOBI TECHNOLOGY」と名付けられた。さらに、空中を音も立てずに飛翔するフクロウの羽にヒントを得て、トレッドパターンの溝の中に、通過する空気の流れをコントロールし、静粛性を高める突起加工も施した。こうしたタイヤの骨格に関する新技術導入によってロードノイズ(荒れた路面で聞こえる低周波音域のノイズ 「ゴー」「ガー」音)は36.9%、パターンノイズ(スムースな路面で聞こえる高周波音域のノイズ 「シャー」音)は32.4%軽減され、路面の突起を乗り越えた時の振動の入力も10%低減された。これら一連の技術を考案したのは、当時入社5年目の若手技術者。先進技術に果敢にトライし続けてきた住友ゴムのチャレンジスピリットは若い世代に受け継がれ、「LE MANS V」の誕生に巨大な貢献を残した。

関係部署も、気持ちをひとつにしてゴールへ

残る課題は、量産化だ。試作品のテストで良好な結果が得られても、工場の生産ラインに載せて量産できなければ製品として市場に供給することはできない。特に「LE MANS V」では、快適性能をギリギリまで追求した結果、鋳造ではなく削り出しとなる金型製作や材料の加工、生産プロセスの難易度が従来製品とは比べものにならないほど高まり、大きな障害となった。「こんな複雑で高い精度が要求される生産工程を、量産のラインに載せることはできない」。モノづくりを手がける工場の技術者は誰もが難色を示したが、ここであきらめるわけにはいかない。プロジェクトチームは工場サイドと何度も何度も折衝を重ねるとともに、岡山テストコースに製造現場のスタッフを招集して試験走行を行ない、従来製品とは隔絶した異次元の乗心地を体感してもらうことで量産化を実現することの意義を訴えた。「ここまで乗心地が向上するなら、一度やってみましょう」。工場スタッフも今までとは格段に違う乗心地のよさに驚き、量産にむけた技術開発に全力であたることを約束してくれた。工場で「LE MANS V」の生産ラインが稼働をはじめたのは、発売開始の2ヶ月前のことだった。  

「LE MANS V」は、住友ゴムの技術開発力の高さをあらためて示すものとなった。創業以来110年にわたって蓄積された技術の知見と経験値は若い世代の技術者の手に受け継がれ、これからもタイヤとクルマの未来を切り開く新たなイノベーションを生み出し続けていくに違いない。

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