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PROJECT03:製造システムの進化 NEO-T01

100年の集大成

PROFILE

  • 設計開発 化学専攻 久次米 智之 2007年入社

  • 研究 物理専攻 玉田 良太 2005年入社

  • 製造開発(白河工場) 生命環境科学専攻 矢口 昌 2008年入社

  • 設備開発(白河工場) 電気専攻 北本 裕規 2004年入社

新たな進化へ、技術者たちはバトンをつないだ。

住友ゴムは、創立から100年余り、タイヤの性能向上を目指して絶え間なく製造技術を進化させてきた。2012年には、その集大成として究極の高精度を追求した高精度メタルコア製造システム「NEO-T01」を完成。2014年4月、最初の製品として欧州向けランフラットタイヤの量産が開始され、その後さらに生産能力は3倍に拡張された。実用化までの道のりは、決して平坦なものではなかった。技術者たちは、行く手に立ちはだかる壁を乗り越えるためにそれぞれの持ち場で全力を尽くし、ゴールまでのバトンをつないだ。

設計開発多くの人を喜ばせたい―そのことしか頭になかった。

「NEO-T01」は、従来のタイヤ製造システムは考え方もプロセスも違う。従来製造システムは、筒状のドラムに各種部材を貼り付けてタイヤを成形するが、「NEO-T01」は完成品サイズでつくられた立体成形フォーマーにコンピュータ制御で精密に部材を貼り付けてタイヤをつくる。これにより品質のバラツキがなくなり、限りなく真円に近い超高精度のタイヤをつくることが可能になる。『ただ製造システムが変われば、金型設計や構造設計のやり方も当然変わります。例えば従来製造システムでは、製造システム側での微調整が可能であり、設計はある程度の自由度を持っていますが、「NEO-T01」は製造システムの制約上、高精度の設計が要求され、設計ミスは絶対に許されません。根本から設計思想を改め、新たな手法を1から確立していかなければなりませんでした』(久次米智之)。

設計にあたっては、業界最軽量と欧州のタイヤラベリング制度で最高クラスの評価獲得を目指した。だが「NEO-T01」として初の製品であり、過去のランフラット開発の経験は通用しない。この高い壁に立ち向かっていけたのは、これまでにないランフラットタイヤを世に送り出し、お客様に喜んでいただきたいという強い思いがあったからだ。『従来のランフラットタイヤは空気圧がゼロになっても車体を支えられるようにサイドウォールに一定の厚みを持たせてあり、乗心地が固くなるのが欠点でした。しかし超高精度な成形が可能な「NEO-T01」だと、サイドウォールをギリギリまで薄くし、耐久性を確保しながら軽くて快適な乗心地のランフラットタイヤを実現できます。サイドウォールをどこまで薄くできるか。シミュレーション担当の研究第一部と協力しながら、わずかな可能性を必死に探りました』(久次米智之)。開発にようやくメドがついたのは、2014年初頭の頃だった。

研究前例のないチャレンジに、強い使命感に駆られた。

「NEO-T01」は、製造工法の特性上、設計の精度により厳密さが求められる。また新製品のランフラットタイヤは、リプレイスタイヤで、さまざまな車種に対応するため、サイズの異なる9種のモデルがラインナップされる計画。品種も多く、ひとつひとつ試作品で性能評価していたのでは間に合わない。そこで、開発をスピードアップするために、コンピュータシミュレーションが活用されることになった。『入社以来、研究第一部でシミュレーションの研究に携わり、さまざまなタイヤの設計開発にも関わってきましたが、「NEO-T01」で生産されるランフラットタイヤの設計は、いつも以上にシミュレーションの果たす役割が大きく、責任も重い。これは「やるしかないな」と、感じました』(玉田良太)。

シミュレーションで特に難しい課題だったのが、ランフラットタイヤで求められる空気が抜けた状態での耐久性の予測だ。『空気が抜けた状態のタイヤの変形状態は非常に複雑なのですが、設計から、その変形量を1ミリ以内で予測してほしいと求められたときには、厳しい精度要求に途方に暮れました。解析結果と試作品の実測結果とがなかなか一致せず、何度も計算をやり直したのを覚えています』(玉田良太)。またシミュレーション技術は、タイヤ内部にかかる応力やひずみを解析することも可能。見えない部分を見える化し、メカニズムを解明することで、耐久性能の改善にも貢献。設計全般を通じて、なくてはならない重要な役割を演じた。『コンピュータシミュレーションが、これほどまでに活用され、実際のタイヤとして立ち上がってきたときの達成感は何事にも代えがたいものがありました。タイヤ設計の新たな手法を確立する先駆けの役目を果たせたとしたら、研究部門の一員としてこれほど嬉しいことはありません』(玉田良太)。

製造開発自分にしかできない——。その思いだけが支えだった。

設計開発が山場を迎えたのと時を同じくして、福島県にある住友ゴム最大規模の白河工場では、2013年春から量産開始にむけた準備が始まった。本社の設計から届く仕様書にそって、試作品をテスト生産。要求性能に達しているかどうかを評価し、改善すべき点があれば「NEO-T01」の心臓部であるコンピュータ制御のプログラムを改良、製造システムとしての完成度を高めていく。『量産開始が翌年に迫る中、評価しなければならない項目は無数にあります。それをすべて消化しなけなければ、量産に入ることはできません。決められた期日までにすべての評価を終えるために日割りの詳細なスケジュールを組み、それを毎日こなしていくのに必死でした。当然プレッシャーはありましたが、それよりも誰も手がけたことのない新たな製造システムに携われる喜びの方が、大きかった気がします』(矢口昌)。  

2014年4月、予定通り量産が始まった。だが平穏な日々は、長く続かない。予想もしていなかった不具合が発生し、生産がたびたびストップしたのだ。『従来だと、どのケースで何をすればいいかのノウハウが確立されていますが、「NEO-T01」は新工法だけにノウハウがまったくない。自分たちで現場を調査し、原因を突き止め、問題解決の方策を1から考える以外に手はありませんでした』(矢口昌)。それでも諦めたり、投げ出しそうになったりしたことは一度もなかった。「NEO-T01」の量産立ち上げを任された技術者としての自負が、それを許さなかった。『「NEO-T01」の立ち上げに関わるのは、国内工場の技術者の中でも私一人。自分しか解決できる人間はいないと思うと、“ここで踏ん張らなければ”という気持ちが自然にわき上がってきました。トラブルが起きるたびに試行錯誤しながらプログラムを書き換えたり、設備のコンディションを調整したり、問題解決の手法をひとつひとつ確立しながら生産を軌道に乗せ、上司からねぎらいの言葉をもらった時、その思いは確信に変わりました』(矢口昌)。

設備開発全員がひとつの思いで、ゴールを目指した。

量産開始から3ヶ月、白河工場で生産された軽量プレミアムランフラットタイヤは、「FALKEN/AZENIS FK453 RUNFLAT」として2014年7月から欧州で発売を開始。翌2015年8月には国内販売も始まった。白河工場では品質面の完成度向上にむけた改善活動が継続されたが、ある日をさかいに状況が一変する。英国大手タイヤ販社が住友ゴムグループの一員となったのを機に、欧州での需要が急増。白河工場に、生産能力の増強が求められたのだ。『現場経験を積むために本社の設備技術部から白河工場に移った矢先、いきなり上司から「年末までに「NEO-T01」の生産規模を10倍にしてほしい」といわれ、面食らったのを覚えています。さすがに10倍は現実的ではありませんが、それくらいの気合いでのぞんでほしいという思いが痛いほど伝わってきて、これは覚悟を決めて取りかからないといけないと、気持ちを引き締めました』(北本裕規)。  

生産技術課と工務課がタッグを組んで、具体的な方策の検討に入った。だが議論は、なかなか前に進まない。「NEO-T01」の量産立ち上げに関わった技術者たちがやっとの思いで手に入れた経験則が邪魔をして、発想のワクをなかなか広げられなかったからだ。『それでも諦めず話し合いを続け、生産ラインのどこを改良すれば生産量を増やせるかをひとつひとつ分析しながら、実現可能な増産計画を立てていきました』(北本裕規)。議論には、組織や部署の垣根を超えて多くの人が加わった。製造現場の声を集め、設備メーカーやセンサメーカーなど外部の協力企業からも意見を聞いた。『生産規模を何倍も増強したいというと、最初は誰もが難色を示します。でも狙いや背景を丁寧に説明するとみんな少しずつ前のめりになって、「やってやろう」というムードが広がっていく。そういう瞬間がたまらなく好きですね。モノづくりに情熱を燃やす人間が集まり、気持ちをひとつにして目標に立ち向かう時の一体感こそ、この仕事の醍醐味。最終的に生産規模を3倍にまで拡大できたのは、組織や部署を超えた結束力があったからです』(北本裕規)。

2008年の研究開始から、実に4年の歳月を費やして完成した新工法「NEO-T01」。研究・設計・生産技術・工務など、多くの技術者がバトンをつなぎ、さらに数年をかけて実用化に至った。だが物語は、ここで終わりではない。AI・IoTプラットフォームを活用して、高品質で高効率なタイヤ生産を目指すシステム構築が名古屋工場をモデルに始まり、白河工場の「NEO-T01」生産ラインでも導入に向けた検討が始まっているのだ。目指すのは、ITによって高度に管理され、極限まで自動化が追及された理想のスマートファクトリー。製造技術のさらなる進化へ、技術者たちの新たな挑戦が始まっている。