トップコミットメント

※このページは、「統合報告書2026」に掲載した内容です。

トップコミットメント

変革と挑戦を貫き、新たな価値創造を
グローバルで実現する

代表取締役社長

國安 恭彰

現場と向き合い、決断する経営を実践

2026年3月、DUNLOPの代表取締役社長に就任いたしました、國安恭彰です。当社における新たな時代の幕開けというべき重要な時期に経営トップに指名されたことに対して責任の重さを痛感するとともに、当社の企業価値をさらに向上させるべく変革と挑戦をやり切る覚悟です。
社長就任が決まって以来、当社が持つ可能性の大きさを日々感じています。技術、人材、そしてグローバルに広がる事業基盤といった強みを、着実に成長へと結びつけ、ステークホルダーの皆様に対して期待以上の価値を提供することが私の責務と捉えています。
当社グループは海外売上比率が70%を超え、従業員の約7割が海外で勤務するなど、事業規模としてはグローバル企業です。しかしながら、グループ全体としての一体感や価値観の共有という点で十分とは言えず、真のグローバル経営の実現に向けては大きな伸びしろがあると認識しています。
私が重視したいのは、企業理念の中にある「WAY」を自ら体現し、個人と組織の挑戦を後押しする経営をグローバルで実践することです。多様な人材がそれぞれの価値観や強みを発揮し、互いに認め合いながら価値創出につなげていく、多様性を尊重しインクルージョンを意識した経営を一層推進していきます。
私は1992年に入社以来、新車装着タイヤの設計をはじめ、製造現場、生産技術、品質保証、そして経営企画と、事業の川上から川下まで幅広い領域を経験しました。これらの経験の中で一貫して感じてきたのは、課題の本質は常に現場にあるということです。現場では、計画通りに物事が進むことは稀で、想定外の課題に直面することが日常的に起こります。そのような状況において、問題を多面的に捉え、優先順位を見極めながら対応することに努めてきました。
また、長年にわたり技術者として仕事に向き合う中で、困難な課題に直面しても決して諦めない姿勢を貫いてきました。一つの方法が通用しない場合でも、道は無限にあるという前提に立ち、試行錯誤を重ねて成果につなげていくことを大切にしてきました。
経営において重要なのは、「自ら考え、決断し、その結果に責任を負うこと」です。不確実性が高まる中、過去の成功体験や前例だけに依拠した判断では対応できない場面が増えています。だからこそ、現場で得た知見とデータを踏まえ、経営として責任ある意思決定を行う必要があります。何事においても判断を先送りするのではなく、仮説を立て、スピードと柔軟性をもって決断していきます。前社長である山本会長のもとでやり切った構造改革を成長の基盤として確実に定着させ、長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」の実現を通じて、当社を次の成長ステージへ導いていく。それが私に託された役割と、受け止めています。新社長として意思決定の質とスピードを重視し、グローバル企業としての競争力をさらに高めてまいります。

変化する事業環境に対応し、成長へ転換

現在、自動車産業は、技術革新や社会要請の変化であるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化といったモビリティの変化)やSDV(ソフトウェアで性能や機能が変わるクルマ)の進展という背景のもと、産業構造そのものが再定義される転換期にあります。価値の源泉や競争軸が大きく変化しつつある一方、技術や市場の方向性が一様ではなく、多様な対応が求められており、不確実性の高い環境下で迅速かつ的確な意思決定が不可欠となる、極めて難易度の高い局面にあります。特に中国メーカーの台頭は、競争環境に大きな影響を与えています。開発スピードやコスト構造において従来とは異なる競争力を持ち、市場の前提を変えつつあります。
また、電動化の進展は欧州、中国、米国では市場環境や政策の方向性に応じて普及スピードが異なるなど地域ごとに差があります。このため、地域特性を踏まえた戦略が不可欠です。
さらに、モビリティの利用形態も変化しています。所有から利用へと価値観がシフトする中で車両の稼働率や使用環境が変わり、タイヤに求められる機能が多様化しています。これにより、耐久性や効率性に加え、データ活用による付加価値の提供が重要になっているのです。
加えて、地政学リスクや経済圏の分断、原材料価格の変動などにより、事業環境の不確実性は一層高まっています。このような状況に対処するためには、柔軟かつ迅速な意思決定がますます重要と考えます。
2025年は、当社にとって構造改革をやり切り、成長へ舵を切る布石となる年であり、当社として進むべき方向性をあらためて明確にすることができました。具体的には、北米における生産体制の見直しによりコスト構造を改善し、収益性の向上を実現できました。また欧州・北米・オセアニアでのDUNLOP商標権等取得により、ブランド戦略をグローバルで再構築しました。これらの取り組みは今後の成長に向けた基盤となるものです。

「R.I.S.E. 2035」のもと、成長戦略を実行する

「R.I.S.E. 2035」については、私自身、経営企画部にて戦略策定に関わり、2035年に向けた目指す姿を練り上げました。長期経営戦略は単なる方針ではなく、今後の取り組みを具体的に示すとともに、財務指標についてもコミットメントとして掲げています。
また、「R.I.S.E. 2035」は、従業員に対するメッセージでもあります。「これから、私たちはどこへ向かうのか」その意思を示したものです。その実現に向けて、一人ひとりが「強い想いと果敢な挑戦」により成長していく必要があることを共有しています。人の成長が企業の成長につながるという認識のもと、人的資本の強化も重要な要素です。
AIの活用を含めた既存業務の効率化を進めることで人的資源を捻出し、成長分野へと再配分していきます。併せて、従業員一人ひとりの強みや志向を踏まえながら、最適な配置を行うことで、組織全体の生産性と価値創出力の向上を図ります。
当社はこれまで、技術を起点とした事業展開を強みとしてきましたが、変化の激しい環境の中では、当社としての方向性を明確にした上で、それに見合った技術を組み上げていくことが重要になります。「R.I.S.E. 2035」で示した方向性に基づき、各事業ともに中長期的な視点でリソースを配分しながら、事業を進めてまいります。
2035年の目指す姿として、「ゴムから生み出す“新たな体験価値”をすべての人に提供し続ける」を掲げました。「すべての人」とは、お客様をはじめ、株主の皆様、従業員とその家族、さらには地域社会を含むステークホルダーの皆様です。商品やサービスを通じて価値を提供するだけでなく、当社に関わるすべての人に誇りや共感を持っていただける存在となることを目指しています。
その中核にあるのが、DUNLOPブランドです。今後は、グローバルブランドとして、商品・体験・発信の一貫性が担保され、新車装着やモータースポーツ、デジタル領域に至るまでその価値が波及するものと考えます。
今後、ブランド価値の向上においては、事業間の相乗効果を高めていくことが重要です。スポーツ事業では、ゴルフおよびテニス分野においてグローバルでトップクラスのポジションを確立することを目指し、DUNLOPブランドの価値向上を牽引します。競技・レジャー双方の顧客接点を通じてブランドの認知と共感を広げ、タイヤ事業を含む各事業に波及効果を生み出します。

「R.I.S.E. 2035」のもと、成長戦略を実行する

2026年の重点課題

2026年は、「R.I.S.E. 2035」を具体的な成果へと結びつける上で、極めて重要な一年と位置付けています。最優先課題は、DUNLOPブランドの復権を確実な成果として示すことです。欧州でのDUNLOPタイヤの販売については、立ち上がりとして一定の手応えを得ており、この流れを確実に定着させることが、成長戦略の重要な前提となります。
同時に、収益構造の改革に向けては、基盤強化を着実に進めていきます。取り組みを進めるにあたり、各事業において重点テーマを明確にしています。
タイヤ事業においては、プレミアム商品比率の引き上げに加え、総原価低減活動「Project ARK(アーク)」による全社的なコスト最適化を通じて商品力とブランド価値の向上を図ります。
DUNLOP商標権等取得を機に、オールシーズンタイヤをはじめとするプレミアムタイヤを、欧州・北米・豪州で本格展開し、開発体制を強化した現地拠点と一体となり、収益成長を加速します。

2026年の重点課題

スポーツ事業では、SRIXON(スリクソン)・XXIO(ゼクシオ)・DUNLOPのブランドポートフォリオを軸に、北米・欧州でのゴルフ・テニス事業の成長を加速させ、eスポーツを含む新たな顧客接点の拡充を通じて、グローバルでのDUNLOPブランドの価値向上を牽引します。
産業品事業では、医療用ゴムや制振ダンパーを中心に、高付加価値分野へのシフトを進め、アジアを軸とした海外展開と、お客様に共感をいただけるような付加価値の高い“共感商品”の市場投入を通じて、収益成長を図ります。
また、オートモーティブシステム事業では、独自のソフトウェア技術であるSENSING COREを中核としたデータビジネスの拡大を進めます。タイヤから取得される情報を活用し、異常検知に加え、故障予知までを実現することで、安全性と稼働効率の向上に貢献していきます。その実現に向けては、2025年に買収した米国のViaduct(バイアダクト)社が持つAI技術との融合を進め、より高度な価値提供を目指します。さらに、新規事業領域では、現在開発を進めている複数の新技術について、事業化を見据えた取り組みを加速させ、将来の成長ドライバーとして育成してまいります。
このように、当社はタイヤを中核としながらも、各事業の強みを活かし、価値創出の領域を広げていきます。2026年は、成長戦略における個々の施策を着実に実行してまいります。

「事業は人なり」持続的成長を支える経営基盤の強化

サステナビリティは当社にとって、住友事業精神にある「信用と確実」「進取の精神」「事業は人なり」「自利利他、公私一如」に通じるものであり、事業と一体で推進していくべきものです。品質・人権・環境は製造業の基盤であり、これらを確実に実践することが、持続的な成長に不可欠であると考えます。例えば、タイヤの軽量化は、燃費や電費の向上を通じて製品価値を高めると同時に、使用する原材料の削減や製造工程におけるエネルギー低減にもつながり、CO2排出量の削減に寄与します。一方で、耐久性や安全性との両立といった課題を伴うものの、挑戦し続けることが、結果として技術的なイノベーションを生み出す機会となり、企業価値の向上にもつながると考えます。
また、アクティブトレッドなど新技術は、使用環境に応じた性能を一つのタイヤで実現することにより、タイヤの使用本数そのものを減らす可能性を持っています。これは廃棄物や資源使用の削減に寄与する可能性があるとともに、顧客にとっての利便性や価値の向上にもつながる取り組みです。このように、環境負荷の低減と顧客価値の双方の実現に向けた取り組みを戦略的に推進していきます。
加えて、業界特有の課題への対応も重要です。タイヤ・路面摩耗粉じん(TRWP)については、その発生抑制や回収技術の開発に取り組むとともに、国内外の研究機関や業界団体と連携し、評価手法や規格の開発にも貢献してまいります。また、重要な原材料である天然ゴムについては、サプライチェーンにおける人権の尊重とともに、自然環境への依存および影響を適切に認識し、対応することが不可欠です。トレーサビリティの確保に加え、サプライチェーン上流における実態の把握や関係者との対話を通じて、理解の深化と必要な支援に取り組んでまいります。
こうしたさまざまな取り組みを支え、DUNLOPの価値創造の源泉となるのは、人です。従業員一人ひとりが主体的に考え判断する人材、率直に意見を言える組織、挑戦を応援し合える文化を重視し、多様性の尊重とインクルージョンを基盤とした、挑戦を後押しする企業風土を醸成していきます。挑戦の結果としての失敗は否定することなく、その挑戦を称えます。また、技術の深化と知的資本の蓄積を進めるとともに、製造基盤の高度化を通じて競争力を高めます。
そして、多様な力を一つに結集し、「R.I.S.E. 2035」を実現することで、変化を乗り越えながら持続的に成長する企業へと進化していきます。その実現に向けて、人を育て、技術を育て、会社を育て、そして社会に貢献するという複数の視点を統合していく考えです。
これらの取り組みを支える経営基盤として、実効性の高いガバナンスが不可欠です。現在、取締役会による監督機能の強化を進めており、取締役会議長を社外取締役が務める体制とし、社内・社外取締役の構成を見直しています。経験・知見・スキル・属性の観点から多様なメンバーを揃えるとともに、取締役会にとどまらず、オフサイトミーティングの開催などを通じて率直かつ誠実な議論を行っていきます。
私たちは、DUNLOPが人々の人生に寄り添い、あらゆる場面でその価値を実感していただける存在でありたいと考えています。DUNLOPのもとに多様なステークホルダーが集い、価値を共創していくブランドへと進化させていきます。「最高の安心とヨロコビ」という「Purpose」を具体的な体験価値へとつなげていきます。世界初の技術を社会実装し、それを世界標準へと昇華させていく。その歩みを通じてDUNLOPの存在意義を、商品・サービス・ブランド・データのあらゆる領域で示していきます。
当社は、すべてのステークホルダーの皆様に信頼され、選ばれ続ける企業であり続けます。そして、社会課題の解決を通じた価値提供と持続的な事業成長を両立してまいります。皆様には当社の成長ポテンシャルをご理解いただいた上で、ご支援とご期待を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

世界初の技術を社会へ DUNLOPは、人生に寄り添う 価値を共創します