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写真:代表取締役社長 山本悟写真:代表取締役社長 山本悟

「選択と集中」で早期に業績を挽回し、
 すべてのステークホルダーに
「最高の安心とヨロコビ」を

住友ゴム工業株式会社
代表取締役社長
代表取締役社長 山本悟代表取締役社長 山本悟

プロフィール : 
山本 悟(やまもと さとる)

1982年4月
当社入社
2001年1月
同タイヤ営業本部販売部長
2010年3月
同執行役員
同ダンロップタイヤ営業本部副本部長
2011年3月
同ダンロップタイヤ営業本部長
2013年3月
同常務執行役員
2015年3月
同取締役(常務執行役員)
2019年3月
同代表取締役社長(社長) 現在に至る

収益性を改善すべく、新中期計画がスタート

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2022年は、新型コロナウイルス感染症による制約が続き、海上運賃の高騰、半導体供給不足による自動車メーカーの減産、中国のロックダウンによる市況低迷のほか、ロシア・ウクライナ情勢に端を発した原材料価格の上昇、グローバルな物価上昇による市況悪化など、多くの逆風が重なった結果、事業利益は前年を下回りました。
こうした厳しい経営環境のなか、前中期計画で目標に掲げていた売上収益1兆円を前倒しで達成できたことは大きな成果でした。売上収益は各市場でお客様からいただいた信頼の総量であるととらえているからです。
当社では、変化する事業環境に柔軟に対応できる強固な経営基盤を構築し、利益を回復基調に反転させることが最重要課題であると受け止め、新たに策定した中期計画(以下、新中計)を今年スタートしました。
新中計では、2025年までの期間、既存事業の選択と集中、そのための構造改革に注力します。併せて、成長事業の基盤づくりと将来への種まきも推進します。2026年以降はDX経営を実践し、事業ポートフォリオの最適化、成長事業のビジネス拡大により再成長を果たし、「Our Philosophy」の具現化につなげていくことを新中計の骨子としています。
まずは構造改革を確実にやり切り、その後の飛躍につなげていきたいと決意を固めています。

「全地域・全事業への集中」から「選択と集中」に転換

当社は従来、中国や新興国中心に海外事業拡大を進めてきました。そして、2015年のGoodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約および合弁事業の解消以降は、特に欧米での事業拡大を通じてグローバル体制構築に取り組んできました。その結果、海外中心に売上収益は順調に増加したものの、利益面では、生産・販売投資の効果を十分刈り取れず、外部環境の大きな変化もあり収益性が低下している状況です。
これまで、グローバル体制構築を進めてきたなかで、全市場に対応するため、多くの商品を提供してきました。これを支えるため、生産・開発・物流・販売・サービス体制を拡充してきたことにより固定費が増加するとともに、さまざまな非効率が生じて収益性圧迫、損益分岐点悪化につながっていると考えています。
一方、2020年1月にスタートさせた、組織体質と利益基盤強化の経営基盤強化活動「Be the Change」プロジェクトは3年を経過し、成果が出つつあるとの手応えを感じています。組織体質強化では部門を超えた連携やチャレンジが活発化し、利益基盤強化では180部門から7,000余りの改善施策が生まれ順次実施しています。
また、基盤となるDX経営の実践に向けた基幹システム刷新などは2025年完了見込みです。
これらをベースに、新中計では、全体最適の考え方に基づき、従来の「グローバル体制構築のための全地域・全事業への集中」から「選択と集中」に転換し、事業ポートフォリオの最適化を図ります。
事業ポートフォリオ最適化のため、市場成長性とROIC(投下資本利益率)による分析を行い、各事業を収益改善・構造改革事業と成長事業・収益事業に分類しました。収益改善・構造改革事業に対する投資を抑制し、収益性改善のための抜本的な対策を講ずるとともに、成長事業・収益事業に積極的に投資を行い、収益向上を図ります。
大きな方針転換であることから、事業所ごとに説明会を実施しました。これにより、社員が新中計をしっかり理解し、新中計の実効性向上とスピードアップが図られ、加えてROIC浸透にもつながると考えています。そして、選択と集中については、案件ごとに当該事業部門と対話をしながら、方向性をしっかりと決めていきます。
新中計の実行において、過去からの課題に対しては、真正面から向き合い先送りせず、役員中心にけん引し、やりきります。個別事業の撤退や売却も選択肢の一つとなります。あらゆる可能性を検討しており、今後、具体的な事案が決定しましたら、都度公表してまいります。

タイヤ事業における収益改善の取り組み

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写真:代表取締役社長 山本悟

最優先課題と位置付ける北米事業については、日本やアジアの生産拠点からの輸入と北米工場での生産に分けて説明します。
まず、輸入については、昨今の海上輸送費高騰により採算性が低下していましたが、足元では海上運賃相場が落ち着いてきており採算性が改善傾向にあります。
当社は、SUV用を中心とした高付加価値商品の展開で、競合他社との差別化を図っていく方針です。米国での乗用車用・ライトトラック用タイヤのシェアも着実に向上していますので、引き続き魅力的な商品投入により北米市場でのファルケンタイヤのプレゼンスを向上させ、Tier 2トップを目指します。
一方、米国工場の生産性改善については、コロナ禍の影響で日本からの支援が思うように進みませんでした。コロナ禍からの回復もあり、日本からの支援も再開し、生産性を高める取り組みが進行中です。また、米国工場の収益改善に取り組みつつも、あらゆる選択肢を検討し2025年までの抜本的な収益化に向けた目途付けを行います。さらに、将来のリスク低減対策として地産地消比率を引き上げるため、2026年以降の新拠点設立の検討を開始しました。ただし、当面は大型投資に対応できる投資余力の回復に注力します。
そして、タイヤ事業全体としては、事業効率を向上し、損益改善につなげるために、運営、組織体制を見直します。よりフラットな組織とし、デジタルの基盤を活用して商品サイズ数の削減、原材料費最適化、生産・物流最適化などを進め、収益力の向上を図ります。

スポーツ事業、産業品事業における新中期計画の注力ポイント

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スポーツ事業は2020年、一時的にコロナ禍の影響を大きく受け業績が低迷しましたが、その後健康に対する意識が高まり、主力のゴルフ市況回復に伴い、業績も向上してきました。
当社では、スポーツ事業を、世界中の人々に感動とヨロコビを提供できる事業と位置付け取り組んでいます。
ゴルフでは、世界最大市場の北米でのプレゼンス向上を通じて、クラブ・ボール販売で世界3位を目指し、全世界でのクラブ・ボールシェアを15%まで伸長させます。世界中に波及効果のある北米において、契約選手の活躍や、それを活用した販促活動、販売・サービス体制の拡充、新商品投入などに注力しており、北米販売を倍増させます。
テニスは、全豪オープンでの公式ボール提供や、ATP(男子プロテニス協会)ツアー大会での4年連続ボール使用率No.1をアピールし、ブランド価値をさらに高め、テニスにおける販売増と利益率向上につなげていきます。
産業品事業は、安心・安全・快適な社会を支え、人々の暮らしに貢献する事業です。今後はさらに「Our Philosophy」の具現化につながる事業となるよう、制振ダンパーと医療用ゴム製品を中心に取り組んでいきます。
制震ダンパー「MIRAIE」は、国内新築木造住宅用制震ダンパーでシェアNo.1です。「MIRAIE」に用いている当社独自のゴム技術をさらに進化させ、ビル・橋梁・自動倉庫分野への取り組みを強化するとともに、海外市場にも拡大していきます。熊本城などの歴史的建造物にも採用いただいており、文化財の保全にも貢献できる事業といえます。
医療用ゴム製品では、当社独自の高付加価値ゴムで事業拡大し、人々がより安心・安全・快適に生活できる社会づくりに貢献していきます。

「Our Philosophy」の具現化に向けた取り組みを加速

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当社の「Our Philosophy」のPurposeは「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」です。この具現化として、スマートタイヤコンセプトでのタイヤの進化、センシングコアの事業化などの成長事業、新規事業に集中的に取り組みます。
タイヤ事業では、高機能タイヤ、特にEV用タイヤに注力していきます。EVの要求性能は、低電費性能、静粛性、軽量化、耐荷重性などがあり、これらに対応できるタイヤそのものの技術を確立します。そして、世界で5千万台超の自動車に装着されているDWS(空気圧低下警報装置)、当社が世界で初めてタイヤに搭載した吸音スポンジ、そして当社独自技術である吸音スポンジ対応のタイヤパンク応急修理キット「IMS(Instant Mobility System)」を組み合わせることで、さまざまな要求性能にワンストップで対応することが可能となります。これら当社が得意とする商品・技術の組み合わせで他社との差別化を図りながら、EVのニーズに総合的に対応していきます。
さらに、スマートタイヤコンセプトの技術の一つ、「アクティブトレッド技術」を搭載したオールシーズンタイヤで、将来のモビリティ社会に貢献します。アクティブトレッドは、乾いた路面、ウエット路面、雪上路面など、天気や気温の変化によるさまざまな路面状況に応じて、ゴムが最適な性能にスイッチする技術です。この技術の一部を先行搭載した次世代オールシーズンタイヤを2024年に商品化します。
センシングコアの事業化については、タイヤからしか得られない情報を価値として提供することで、ドライバーの安全・安心に貢献します。センシングコアは車輪の回転速度からタイヤ周りの状態・状況を検知するソフトウエアです。タイヤに追加のセンサーを付けずにタイヤ周りの情報を検知したいという発想から生まれました。事業化の一例としては、センシングコアの機能を自動車メーカーへライセンス販売して新車に搭載いただくケースがあります。センシングコアはタイヤ空気圧・摩耗・荷重・路面の滑りやすさなどを検知できますが、最近では、車輪回転速度のむらを精緻に解析することで車輪脱落の予兆を検知する機能が大きな関心を呼んでいます。
センシングコア技術は、他企業が持つアセットと連携することで、さまざまなソリューションサービス事業を創出できる可能性があります。この技術の採用拡大やサービスの事業化によって、2030年までに100億円規模の事業利益創出を目指します。

サステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ」の進捗

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写真:代表取締役社長 山本悟

当社では、2021年に公表したサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」に掲げた各施策を着実に推進しています。
「環境」分野では、2050年にスコープ1、2におけるカーボンニュートラルの実現を目指し、鋭意取り組みを進めています。その一つに、白河工場(福島県)でのタイヤ製造工程における、カーボンニュートラル化に向けた次世代エネルギー、水素活用の取り組みがあります。
タイヤ製造工程では、電力と天然ガスによるボイラーの熱源という2つのエネルギーが必要です。電力については、太陽光パネルで代替できましたが、ボイラーの熱源がカーボンニュートラルに向けた課題でした。そこで、白河工場で2021年から水素活用の実証実験を開始し、今般水素ボイラーと太陽光発電の自然エネルギーを利用し、日本初の製造時(スコープ1、2)カーボンニュートラルを達成した量産タイヤが完成しました。ファルケンブランドタイヤ「AZENIS FK520」で、2023年1月から量産を開始し、主に欧州市場向けに供給しています。現在は白河工場の1ラインだけですが、今後白河工場全体に広げ、さらには日本の全工場にも広げていきます。
グローバルでは水素以外の再生可能エネルギー導入を進めており、2022年は中国で、今年に入りタイの工場で大規模な太陽光発電設備を導入しました。
このほか、環境面での当社独自の取り組みとしては、循環型社会の構築を目指す「TOWANOWA構想」を2023年3月に発表しました。センシングコア技術を核に、新たなソリューションサービスを創出し、2030年、さらには2050年に向けて当社ならではの循環型ビジネスを確立していきます。

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「社会」分野では健康経営推進や経営基盤強化活動「Be the Change」プロジェクト(BTC)の組織体質改善活動の進化、ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)の推進、サプライチェーンマネジメントなどに数多くの成果が出ており、サステナビリティ長期方針で各目標の区切りとしている2030年に向けて鋭意取り組みを進めています。
D&I推進に関しては、風土醸成のための施策や制度見直しなど、当社の積極的な取り組みが社外の認証取得などで評価されつつあります。具体的には、2021年のえるぼし取得(女性活躍企業への認証)、2022年のLGBTQ+などセクシュアル・マイノリティへの取り組みに関する認証「PRIDE指標」での「ゴールド認定」に加え、兵庫県から「ひょうご仕事と生活のバランス企業表彰」、直近では兵庫県・神戸市合同認定「ひょうご・こうべ女性活躍推進企業(ミモザ企業)認定」を取得しました。
社内でも、D&I推進に対する前向きな空気が醸成されてきたと感じています。2019年2月にプロジェクトとしてスタートしたD&I活動ですが、2022年4月には専任部署を設立。トップコミットメント発信をはじめ、アンコンシャスバイアスに関する教育、女性のキャリア形成を支援するメンター制度設立、育児や介護と仕事の両立支援など、各施策を急速に推し進めてきました。その結果、男性の育休取得率向上、2023年1月には女性新部長が4人誕生するなど、目に見える変化が起き始めています。
その一方で、まだまだ多くの課題があると認識しています。例えば、女性活躍推進のベンチマークの一つ、女性管理職比率は、依然低い水準です。多様な社員が活躍できる会社とするため、性別役割意識や属性に対するアンコンシャスバイアスなど意識・組織風土の課題と、長時間労働を助長する可能性のある制度や環境への対応が必要と考えています。風土改革と、生産性の高い働き方を目指した制度・環境づくりと、ソフト・ハードの両面からD&I推進に取り組んでいきます。

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コーポレート・ガバナンスの充実では、2022年、取締役会において長期視点での議論ができる時間の確保に向けた付議基準の見直し、社外役員への情報提供拡充による取締役会の実効性向上、新中計策定にあたっての取締役会やその他会議での社外役員との意見交換充実などに注力しました。
新中計の目指すところは、「Our Philosophy」具現化にほかならないと考えています。当社はメーカーであり、商品・サービスにおいて「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビ」をつくり出し、提供するのが使命です。多様な人材が力をしっかり発揮できる環境を整えながら、チームワークでその力を大きくし、変化を乗り越えていきます。
「Our Philosophy」の具現化に向けて社員とともにしっかりと歩み、すべてのステークホルダーの皆様の「最高の安心とヨロコビ」に貢献できるよう、企業価値向上に努めてまいります。

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