住友ゴムグループは、社会や環境と共存しながら持続的に事業を行うことに重点を置き、全社戦略実現に向けての大きな原動力、加速力を獲得すべく、2020年12月に新企業理念体系「Our Philosophy」を制定し、私たちの存在意義=Purposeを「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」と定めました。Purposeをあらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とすることで、経済的価値のみならず社会的価値の向上に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。環境の保全は企業が果たしていかねばならない世界共通の重要な責任の一つであり、グローバル企業として当社グループは世界中の拠点で環境経営を推進しています。
当社グループでは、「持続発展可能な社会」を実現するためのグループ方針として2007年7月に環境方針を定めています(2024年12月改定)。
取り組むべき環境に関する課題と対応を方針の中に明示し、脱炭素・環境負荷低減に取り組んでいます。
今後もサプライチェーン全体での環境課題解決に取り組みステークホルダーの期待に応えることで企業価値の向上につなげてまいります。
当社グループではサステナビリティ経営推進本部を中心に、経営トップをはじめとした各部門と連携を図りながら、環境マネジメントの取組みを統合的に進めています。サステナビリティ経営を推進するにあたり、サステナビリティ担当役員を委員長、各部門担当役員を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を年2回開催し、全社方針の徹底、マテリアリティの進捗確認等を実施しています。
サステナビリティ推進委員会傘下にサステナビリティ推進WGを設置し、EMS(環境マネジメントシステム)部会は、そのひとつとして、部門横断の組織で取組みを進めています。
当社グループでは、環境目標に対するPDCAサイクルによる継続的改善のため、国際規格ISO14001の認証を取得し、規格に基づいた環境マネジメントシステム(EMS)を運用・実践しています。
2024年度中に1拠点を追加し、2024年末時点で統合認証下の拠点数は35拠点で、認証取得事業所割合は94.6%を占めます。
またグローバル全従業員に占めるISO14001認証取得事業所の従業員割合は74.2%となりました。
認証未取得の製造拠点においても、取得拠点と同様に環境コーポレート監査を実施し、環境管理体制の強化を図っています。
住友ゴムグループグローバル統合認証(日本語版、英語版)
拠点名 | 取得年 | グローバル統合認証 | |
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住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 |
本社 | 2007年 | ◯ |
タイヤテクニカルセンター | 2007年 | ◯ | |
岡山タイヤテストコース | 2007年 | ◯ | |
白河工場 | 1997年 | ◯ | |
名古屋工場 | 1997年 | ◯ | |
泉大津工場 | 1998年 | ◯ | |
宮崎工場 | 1997年 | ◯ | |
住友ゴム工業株式会社 ハイブリッド事業本部 |
加古川工場 | 1998年 | ◯ |
泉大津工場 | 1998年 | ◯ | |
住友ゴム工業株式会社 スポーツ事業本部 |
ゴルフ科学センター | 1998年 | ◯ |
中田エンヂニアリング株式会社 | 本社・工場 | 2004年 | ◯ |
SRIエンジニアリング株式会社 | 本社 | 2009年 | ◯ |
加古川事業所 | 2009年 | ◯ | |
西神事業所 | 2009年 | ◯ | |
株式会社SRIビジネスアソシエイツ | 本社 | 2009年 | ◯ |
株式会社SRIシステムズ | 本社 | 2009年 | ◯ |
SRIロジスティクス株式会社 | 本社 | 2009年 | ◯ |
株式会社ダンロップリトレッドサービス | 本社・小野工場 | 2010年 | ◯ |
北海道工場 | 2010年 | ◯ | |
株式会社ダンロップゴルフクラブ | 本社・工場 | 2010年 | ◯ |
中国・常熟工場 | 2005年 | ◯ | |
インドネシア工場 | 2003年 | ◯ | |
タイ工場 | 2008年 | ◯ | |
中国・中山工場 | 2004年 | ◯ | |
ベトナム工場 | 2008年 | ◯ | |
マレーシア工場 | 2005年 | ◯ | |
タイ・テニスボール工場 | 2009年 | ◯ | |
タイ・天然ゴム加工所 | 2012年 | ◯ | |
住友ゴム工業(中国) | 2013年 | ◯ | |
中国・湖南工場 | 2013年 | ◯ | |
ブラジル工場 | 2014年 | ◯ | |
トルコ工場 | 2016年 | ◯ | |
米国工場 | 2013年 | ◯ | |
南アフリカ工場 | 2012年 | ◯ | |
DUNLOP TECH GmbH | 2014年 | ◯ |
(2024年12月時点)
当社グループでは、ISO14001統合認証に基づき構築したPDCAサイクルを活用しながら、トップマネジメントが掲げる環境方針に基づき各拠点の特性に応じた環境影響の低減活動を継続しています。
グループ全体のCO2排出総量の削減、水使用量、廃棄物量の削減等に加え、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーへの移行を確実にすべく、組織内外とのコミュニケーションを図っております。
当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす恐れのあるサステナビリティ関連リスクについては、グループ全体のリスク管理について定めるリスク管理規定に基づき、それぞれの担当部署及び各子会社において事前にリスク分析、対応策を検討し、当社の経営会議等で審議しています。また当社及びグローバルサプライチェーンにおける、社会や環境に与える負荷を低減していくために特に重要と考えるテーマについては経営層によるモニタリング・レビューを行い、取締役会へ報告されています。
当社グループは、2009年3月に環境省が創設した「エコ・ファースト制度」で認定された「エコ・ファースト企業」として、新たな取り組み目標をまとめ「エコ・ファーストの約束」を2022年10月に更新しました。
気候変動をはじめとする環境問題など地球規模の社会課題が深刻化する中、社会と当社が持続的成長を遂げていくには、2050年を見越した長期視点での方針が必要と考え、2021年8月にサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を策定しました。今回の「エコ・ファーストの約束」更新には「はずむ未来チャレンジ2050」で設定された、2050年にカーボンニュートラル達成(スコープ1、2)などの目標が盛り込まれています。
環境の分野において「先進的、独自的でかつ業界をリードする事業活動」を行なっている企業(業界における環境先進企業)が、環境大臣に対し、地球温暖化対策、廃棄物・リサイクル対策など、自らの環境保全に関する取り組みを約束します。
当社グループでは、事業活動によって発生した各種環境負荷物質について、環境へ影響を与えないように継続的なモニタリングを実施し、その管理を行っています。
目標と実績は以下の通りです。
2024年の目標 | ISO14001統合認証の維持 |
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2024年の実績 | ISO14001統合認証の維持 |
2025年の目標 | ISO14001統合認証の維持(更新審査) |
中長期目標 | ISO14001統合認証の維持 |
当社グループは、毎年、認証機関による外部審査を受けるとともに、各事業所内で内部監査員資格保有者による内部監査を実施しています。また、2009年度から住友ゴム工業本社の監査員がグループの国内外の各製造事業所を監査するコーポレート監査を原則年1回の頻度で実施しています。
2023年度の外部審査の結果、すべての事業所において良好な評価で、ISO14001:2015グローバル統合認証を更新することができました。
外部審査、内部監査の結果、環境関連法規制に対する重大な違反はありませんでした。
タイヤは自動車の中で唯一路面と接触する部品であり、タイヤが自動車の荷重を支えながら、走る(発進する)、曲がる、止まる機能を発揮するためには、路面とタイヤの摩擦が物理的に不可欠です。摩擦によって発生する粉じんがTRWPで、タイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物です。
TRWPの特性や環境に及ぼす影響については明確になっていないことが多く、それらを明らかにし、環境への影響を低減していくことが当社として取り組むべき課題であると認識しています。
そこで、当社はWBCSD※2のTIP※3(グローバルタイヤメーカー10社からなる業界団体)に発足当時より参画し、TRWPに関する調査研究、評価手法の確立やステークホルダーとの対話などの活動を進めています。TIPではTRWPのほかにも、廃タイヤのマネジメント、原材料と化学物質に関する問題、環境に関わる指標(KPI)の見える化などサステナビリティ全般の業界における共通の課題に対応した活動を行っています。
また、当社は一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA※4)や一般社団法人日本ゴム工業会(JRMA※5)の一員としても活動しており、TRWPの評価に関するISO規格の作成などに取り組んでいます。
※1 Tire and Road Wear Particles
※2 World Business Council for Sustainable Development
※3 Tire Industry Project
※4 The Japan Automobile Tyre Manufacturers Association, Inc.
※5 The Japan Rubber Manufacturers Association
6PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-パラ-フェニレンジアミン)はタイヤ業界で広く使用されている老化防止剤です。近年、6PPDが環境中の酸素やオゾンと反応して生成する6PPD-キノンが特定の水生生物に対して有害の可能性を示唆する論文が発表されたことに端を発し、米国では規制に向けた手続きが進んでいます。
一方で、6PPD自体は、環境中にある酸素やオゾンとゴムとの反応によって生じるタイヤ表面の割れを防ぎ劣化の進行を抑制する重要な役割があり、タイヤがその性能を十分に発揮しお客様に安心して長くご使用いただくために不可欠な材料です。そこで現在、タイヤ業界全体で代替技術の可能性検討や代替品の開発・評価に取り組んでおり、当社もその一員として取り組みを推進しています。
スポーツ人工芝でも、経年使用で破断した人工芝や充填したゴムチップが河川や海に流出し、マイクロプラスチック※1となっている可能性が指摘されています。当社では2020年から、流出状況の確認と流出抑制効果の高い資材・製品の開発に取り組んでまいりましたが、現在では、抑制効果の確認された人工芝外周部レイアウトや排水溝へのフィルター材の設置を人工芝施設関係者に提案し、徐々に流出抑制対応がとられるようになってきました。
今後も、流出抑制技術の開発・改良を進めながら、対策普及の推進に取り組みます。また、こうした当社の取り組みは、環境省の紹介記事※2にも取り上げられ、自治体による人工芝由来のマイクロプラスチック対策のガイドライン※3※4でも紹介されています。
※1 サイズが5mm未満の微小なプラスチック
※2 マイクロプラスチック削減のために。|プラスチック・スマート
※3 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/806/jinkoshiba_gl_10_1.pdf
※4 https://www.city.tama.lg.jp/map/sports/tennis/1003856.html
当社グループにおいて、2024年度は製造拠点にて行政への届け出遅れによる法令違反が1件発生しました(中国・常熟工場、罰金・296,000元)。速やかに現地行政と連携を図って問題を解消するとともに、このような事案については要因分析を実施した上で横展開を行い、他拠点の未然防止に繋げる活動を行っています。
当社グループで排出しているCO2以外の温室効果ガスにはメタン、一酸化二窒素、フロン類、六フッ化硫黄を毎年集計しています。
特にフロン類についてはフロン排出抑制法に定められている機器の維持保全、定期的な点検を遵守するとともに活動量および漏洩量を算定しています。フロン類算定漏えい量報告については、2024年は該当しませんでした。
当社グループでは、PCB特措法(※2)に基づき、PCB含有機器として変圧器、コンデンサ、安定器などを国内工場で保管し、行政へ報告しています。
2024年の廃棄処分実績は変圧器1台、コンデンサ3台、直列リアクトル1台でした。
2024年末時点のPCB含有機器の保管数量は、安定器35台、低濃度の変圧器等の機器2台です。
残りの低濃度含有機器2台につきましては、PCB特措法に基づく処理期限の2027年3月31日までに計画的処理を行っていきます。
※1 PCB:ポリ塩化ビフェニルの総称。水に溶けない、化学的に安定、絶縁性が良いなどの理由で変圧器、コンデンサの絶縁油として使用されていたが、人の健康・環境への有害性が確認され、分解されにくく、広範に環境中に残留していることが知られています。
※2 PCB特措法:「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」2001年に施行。2012年、2016年に改正されました。
2004年10月、自主調査で敷地土壌からテトラクロロエチレンなどの有害物質が環境基準を上回って検出されました。事実を加古川市に届け出ると同時に、近隣の皆様へ説明会を実施しました。
その後は、汚染土壌の除去、継続的な汚染地下水の浄化、在来微生物の働きを活性化させるバイオ浄化に取り組んで、汚染の封じ込めを行っています。
これまでの経過観察により、汚染物質の工場敷地外への拡散はなく、残存範囲がかなり絞り込めていることがわかりました。2015年までの継続監視点は0.01mg/l未満で安定しているため、2016年より隣接部の汚染地点を新たに継続監視点としています。定期的に地下水をサンプリングし、汚染状況の継続的監視を行っています。
設定基準:0.01 mg/L以下
( mg/L )
2023年 3月 |
2023年 6月 |
2023年 9月 |
2023年 12月 |
2024年 3月 |
2024年 6月 |
2024年 9月 |
2024年 12月 |
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継続監視点における濃度 | 0.02 | 0.004 | 0.006 | 0.001 未満 |
0.016 | 0.005 | 0.002 | 0.002 |
当社グループの海外拠点で環境報告書を発行しています。
これらの環境報告書では、各拠点の事業活動による環境負荷、活動目標と実績、社会貢献活動などを開示し、コミュニケーションに活用しています。