住友ゴムグループは、社会や環境と共存しながら持続的に事業を行うことに重点を置き、全社戦略実現に向けての大きな原動力、加速力を獲得すべく、2020年12月に新企業理念体系「Our Philosophy」を制定し、私たちの存在意義=Purposeを「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」と定めました。Purposeをあらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とすることで、経済的価値のみならず社会的価値の向上に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
当社グループは、企業理念体系「Our Philosophy」を実現するため、バリューチェーン全体のリスクと機会を踏まえてマテリアリティを特定しています。特定されたマテリアリティのなかでも、「気候変動」「生物多様性」「循環型経済」は相互に深く関連しており、独立した対応ではなく総合的にアプローチすることが重要と考え、取り組みを行っています。当社グループの事業活動で発生する温室効果ガスにより気候変動が深刻になれば事業全体に大きな影響を及ぼすと考えています。地球温暖化を中心とした気候変動は人類共通の課題であり、より良い地球環境を次世代へつないでいくために解決に取り組む必要があります。地球温暖化の原因であるCO2の発生や排出を削減することは、当社グループの持続的成長と、持続可能な環境・社会の実現に不可欠であり、重要な社会的責務と考えています。
当社グループではサステナビリティ経営推進本部を中心に、経営トップをはじめとした各部門と連携を図りながら、環境マネジメントの取組みを統合的に進めています。サステナビリティ経営を推進するにあたり、サステナビリティ担当役員を委員長、各部門担当役員を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を年2回開催し、全社方針の徹底、マテリアリティの進捗確認等を実施しています。
サステナビリティ推進委員会傘下にサステナビリティ推進WGを設置し、カーボンニュートラル部会は、そのひとつとして、部門横断の組織で取組みを進めています。
当社グループは、2021年6月、TCFDへの賛同を表明しました。気候変動が事業に与えるリスクと機会の両面に関して、ガバナンス、戦略、リスク管理、目標と指標の4つの基礎項目に基づいて情報開示を進めています。
また、気候変動によるリスクは当社グループの重要課題(マテリアリティ)の1つとして特定されており、より詳細な分析が必要と判断しました。そのため、TCFDに基づき4℃、1.5/2℃シナリオ分析による事業影響を把握し、2024年にリスク・機会への対応策を再整理しました。
気候変動の緩和に貢献するため、当社グループは2050年までにカーボンニュートラル(スコープ1,2)の達成を目指します。また、環境に配慮した調達、物流、製造などライフサイクル全体において、気候変動の緩和に向けたさまざまな施策にグループを挙げて取り組んでいきます。
当社グループのリスク管理については下記リンクをご参照ください。
当社グループでは2050年までにカーボンニュートラル(スコープ1,2)を達成する目標を掲げ、各拠点で使用しているエネルギーの実態を踏まえたCO2排出量削減のシナリオを策定しています。サステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」で当初設定した目標「2030年までに50%削減(2017年比)」は、各拠点の積極的な取り組みにより「55%削減」に引き上げました。また、当社グループのCO2排出量はスコープ3が約97%を占めており、サプライチェーン全体におけるカーボンニュートラル達成に向けて、スコープ3排出量の約80%をカバーした2030年目標を設定しました。「カテゴリ1(材料開発・調達)」では、サステナブル原材料の活用、サプライヤエンゲージメントの強化で、2030年25%削減(2021年比)、「カテゴリ4(物流)」ではモーダルシフトの推進などで、2030年10%削減(2021年比)を目指します。「カテゴリ11(販売・使用)」や「カテゴリ12(回収・リサイクル)」ではタイヤの転がり抵抗低減やロングライフ化、リトレッドタイヤの生産能力拡大などを進めます。各プロセスで「はずむ未来チャレンジ2050」およびタイヤ事業における循環型ビジネス構想「TOWANOWA」で掲げる取り組みを推進することで、目標値の達成を目指します。
2030年目標 | 2024年排出量(t-CO2) | 2017年比 | 主な削減施策 | |
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スコープ1,2
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55%削減 (2017年比) |
681,269 | 35%削減 | 省エネルギーの推進、コージェネレーションシステムの拡大、 太陽光発電の導入、再生可能エネルギー由来の電力調達 |
※2017年は排出係数ロケーションベースでCO2排出量計算、2024年は排出係数マーケットベースでCO2排出量計算しています。
プロセス
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材料開発・調達
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物流
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販売・使用
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回収・リサイクル
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GHGプロトコルにおける
スコープ3カテゴリ |
カテゴリ1
(購入した製品・サービス) |
カテゴリ4
(輸送、配送(上流) |
カテゴリ11
(販売した製品の使用) |
カテゴリ12
(販売した製品の廃棄) |
2030年目標 | 2024年排出量(t-CO2) | 2021年比 | 主な削減施策 | |
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カテゴリ1
「購入した製品・サービス」 |
25%削減 (2021年比) |
4,454,962 | 23%削減 | サステナブル原材料の活用、お取引先様とのエンゲージメントの強化 |
カテゴリ4
「輸送、配送(上流)」 |
10%削減 (2021年比) |
364,144 | 3%削減 | モーダルシフトの推進、物流体制の最適化 |
カテゴリ11
「販売した製品の使用」 |
KPI設定 | - | 15%削減 | タイヤの転がり抵抗低減、タイヤのロングライフ化、タイヤ重量の軽量化 |
カテゴリ12
「販売した製品の廃棄」 |
KPI設定 | - | 16%削減 | リトレッドタイヤの生産能力拡大、タイヤ重量の軽量化、サステナブル原材料の活用 |
※排出係数IDEA ver2.3でCO2排出量計算しています。
項目
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詳細
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参考情報
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SBT認定取得
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当社グループは、2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標について、科学的知見と整合した目標として、Science Based Targets Initiative (SBTi) よりSBT認定を受けました。 | |
RE100
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当社は、電力の再生可能エネルギー100%化を目指す企業で構成される国際的な環境イニシアチブ「RE100」への賛同を表明しました。 | |
日本ゴム工業会への参画
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業界の動きに合わせた気候変動対策に対する考え方や戦略を実現するために、日本ゴム工業会に参画し、経団連の「カーボンニュートラル行動計画」の取り組みを実施しています。 |
2024年に従来の投資基準に加えて、気候変動リスク(移行リスクを含む)に対する緩和と適応の優先順位を選定し、他社の動向や市場の情勢を考慮した上で社内のサステナビリティ関連の投資基準を設けました。2025年はこの基準に基づき、事業計画および財務計画にサステナビリティ関連の投資を組み込みます。また、CO2を含む環境パフォーマンスデータ管理システムの予算を確保し、データ分析と管理に取り組んでいます。今後もより精緻なデータ分析と管理を行い、CO2削減の取り組みを一層強化していきます。
項目
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取り組み方
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スコープ1,2
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「省エネルギーの推進」「コージェネレーションシステムの拡大」「太陽光発電の導入」「再生可能エネルギー由来の電力調達」などの取り組みを進めています。これらの施策を通じ、グループ全体でCO2排出量の削減を推進しています。 特にスコープ1の削減においては、蒸気をつくる燃料のカーボンニュートラルが重要な課題であると認識しています。そのため、水素などの新エネルギーの利用に向けた技術の確立と展開を目指し、産学官と連携しながら取り組みを進めています。2030年以降のインフラ整備や技術革新の動向を注視しつつ、燃料転換を含めた脱炭素化の実用化を推進していきます。 |
当社の主力タイヤ工場である福島県白河工場では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として支援を受け、2021年8月から2024年3月まで、次世代エネルギーとして期待されている水素の活用に向けた実証実験に取り組みました。
また、水素エネルギーの導入に加えて、従業員駐車場へ太陽光発電パネルを導入することで、2023年1月には、水素エネルギーと太陽光発電を使用した日本初※1の製造時(スコープ1,2)カーボンニュートラルを達成した量産タイヤの生産を開始しました。
※ 1当社調べ(2023年1月時)
当社の最先端の製造システムであるコンパクトな工程かつ非常に高性能なタイヤづくりを可能にする高精度メタルコア製造システム「NEO-T01 ネオ・ティーゼロワン」の加硫工程に、2023年1月からは水素ボイラーで発生させた蒸気を供給してタイヤ製造を行っていますが、これまでの水素についてはこれまで福島県内で調達していました、これを、2025年4月からは、再生可能エネルギーの電力で水素を製造するP2G(パワー・ツー・ガス)システムを使って、工場内で水素を製造して水素ボイラーに供給を行います。本事業はNEDOの助成を受け、山梨県が中心となって開発した次世代型のエネルギーシステムで、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して水を電気分解することで、環境負荷の少ないグリーン水素※2を製造します。
※ 2:グリーン水素:再生可能エネルギー由来の電力を用いてCO2排出ゼロで生成された水素
2022年1月の中国2工場(常熟、湖南)での再生可能エネルギー由来電力への切り替えに引き続き、同年には中国工場(中山)、国内関係会社の一部、トルコ工場でも切り替えを実施しました。2023年は、ブラジル工場・神戸本社・東京本社(事務所のみ)・タイ工場・インドネシア工場でも再生可能エネルギー由来電力への切り替えを計画しています。さらにタイ工場ではコージェネレーションシステムの導入、世界最大の屋根置き太陽光発電設備の設置を計画しています。
項目
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取り組み方
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スコープ3
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当社グループのサプライチェーン全体が排出するCO2の約97%は自社以外の排出(スコープ3)が占めており、スコープ3の削減が課題となっています。スコープ3削減には自社の努力だけでなく、お取引先様や物流事業者、他社、業界団体との協業が不可欠です。そのため、関係各所と協力しながら、CO2削減に向けた取り組みを一層強化していきます。 |
当社グループにおけるCO2排出量のスコープ3のうち、約80%※3をカテゴリ1「購入した製品・サービス」が占めています(※3間接排出に該当するカテゴリ11「販売した製品の使用」を除く)。そのためサプライチェーン全体でのCO2排出量削減にはお取引先様のご協力が不可欠と考えています。
2024年、当社グループはSBT(Science Based Targets)1.5℃水準に沿ったCO2削減を目指し、全てのタイヤ原材料のお取引先様を対象に、スコープ3削減の取り組み方針説明会を実施しました。この説明会では、調達方針や「パリ協定」の背景、およびCO2削減施策事例について説明するとともに、一次データ※4の提供を依頼し、ご理解とご協力をお願いしました。また、脱炭素の取り組みの要請のみ行うのではなく、お取引先様との対話を大切にしながらお取引先様と協働でCO2排出量削減の取り組みを進めていきます。そのためお取引先様のCO2削減に向けた取り組みの状況を確認するために、一部のタイヤ原材料のお取引先様とエンゲージメントを開始しました。
今後はお取引先様からいただいた一次データへの置換を社内で進め、実態に即したCO2削減策を協働で実施し、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指します。
※4 一次データ:お取引先様が算定した実際のCO2排出量データ
他社と協業で、サステナブル原材料の開発を推進し、サプライチェーン全体でのCO2削減に貢献しています。
他社との協業による気候変動対策については下記リンクをご参照ください。
2024年、一部の物流事業者と当社拠点に対して脱炭素施策のヒアリングを実施しCO2排出量の少ない輸送方法の検討に取り組みました。輸出品の生産工場最寄港積みや輸配送効率化によるCO2排出量の削減を目指しています。実態把握に努めた結果、2030年までのCO2削減方針やロードマップを作成しました。2025年は2024年末に完成したカテゴリ4全社削減方針について、各拠点向けに説明会を実施し、連携を強化します。削減シナリオを各拠点と協働で精緻化し、地域特性も踏まえた上で具体的なCO2削減策を実施します。また、一部の物流事業者には当社のCO2削減方針やモーダルシフト等について説明会を行い、一次データの連携を進め、将来的な削減策を協働で検討します。当社グループはサステナブルな物流を推進し、持続可能な未来の実現に貢献してまいります。
当社グループは、タイヤのライフサイクル全体を通じた技術革新と環境負荷の大幅な低減に取り組み、社会全体のCO2排出量を削減しています。
CO2排出量(スコープ1,2,3)を算出し、これらの削減を環境目標としています。またタイヤの転がり抵抗低減などによる CO2削減を「削減貢献量」として数値化し、タイヤ使用時におけるCO2排出量がどれほど削減されるかを評価するために社外・社内の関係部門と対話を進め、持続可能な未来の実現に向けて取り組んでいきます。
タイヤのライフサイクルにおけるCO2は、車両走行時に燃料が燃焼することで排出されます。当社グループは、カテゴリ11「販売した製品の使用(間接使用段階排出)」においてタイヤの転がり抵抗を低減し、車両の燃費向上に貢献することでCO2排出量の削減に貢献しています。また、カテゴリ12「販売した製品の廃棄」においてもタイヤのロングライフ化やリトリッドタイヤの生産能力拡大と普及を進めることで、サーキュラーエコノミーを促進し、CO2排出量の削減に取り組んでいます。
さらに環境性能と運動性能を両立する革新的なタイヤ技術「スマートタイヤコンセプト(STC)」を搭載した低燃費タイヤの開発・拡充を進めることで、お客様が使用する際に排出されるCO2排出量の削減に貢献しています。2024年10月には夏/冬タイヤを1つにできる性能を持つ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を発売しました。これによりタイヤ製造における省資源化、および廃棄タイヤの削減によるCO2排出量の削減にも貢献しています。
従業員一人ひとりが環境問題に対する認識を深めて、環境保全の取り組みに積極的に参加するよう、環境意識啓発活動を実施しています。2022年は全社取組みとして、住友ゴムのホームページに「カーボンニュートラル広場」を開設し、カーボンニュートラルに関する取り組みや環境情報を動画形式で発信しています。さらに若手の意識改革として、将来の地球環境を考えてもらうため、新入社員を対象にカーボンニュートラルについて座談会を開催しています。