DX人材の育成・データ活用・RPA推進

再成長に向けたリソースシフト

当社では、従来、定型業務から従業員を解放させるために業務のシステム化、RPA化を進めてきました。さらに現在、データ活用が行えるDX人材の育成、業務基盤システムの大規模刷新へ向けた業務プロセスを抜本的見直し、業務効率化と付加価値の高い業務へのシフトを推進しています。

DX人材の育成

中期計画の骨子である「成長事業の基盤づくり」並びに「成長事業のビジネス拡大」に繋げていくための土台として、DX人材育成が重要だと考えています。全社員が共通のスキル・マインドを持つことにより、DX経営の実践に繋げることが出来ます。そうした再成長に向けたリソースシフトを実行するために、事務系の全従業員約3,500人を対象に2022年10月からDX人材育成研修プログラムを開始しました。

当社のDX人材定義として、下図のような構成を策定しました。全社員対象のDXリテラシーの教育をベースに、DXをビジネスに適応させ推進する“ビジネスコア”、AIを作ることが出来て高度なデータ分析を進める“プロ”、必要なデータの収集・活用を効率的に実施する施策を進める“データエンジニア”の3層で育成していきます。様々なDXの施策が具体化する2025年までに以下人員の育成を完了させ、データに基づく意思決定や行動(データドリブン)が全社で出来るような土台作りを進めてまいります。

2023年4月時点ではDXリテラシー:510名、ビジネスコア:100名、プロ:50名、データエンジニア:61名の育成が完了しています。教育を受けた人材が実際の業務から自分でテーマを設定し学習しながら課題解決を進めるPBL(Project Based Learning)といった実践型の研修も取り入れており、18個の様々な領域のテーマにおいてDXを活用しての解決に向けた取り組みを進めている等、学んだことを実務に活かすことも進めております。

当社のDX人材育成構成図
当社のDX人材育成構成図

データドリブン文化醸成に向けたデータ活用の取り組み

DXを推進していくうえでの肝となるのは「データ活用」であると考えています。デジタル技術の進展により様々なものがデータとして取得出来るようになってきています。そのデータをいかに有効に活用して意思決定や行動に繋げていけるかは、現場の1人1人がデータ活用を進めようとする意識を持つことが重要であり、そのためには企業全体にそうした文化が醸成されていないといけません。
そのデータドリブン文化醸成に向けて、当社では自分でデータを見える化/分析するためにセルフBIツールの「Tableau」を導入し、活用を進めています。2018年より導入を開始し、現在はグローバルで約4,200名に使われております。Tableauを活用することで①業務効率化/自動化、②データの見える化による新しい気づき、③得られた結果の素早い共有によるコラボレーション、の3つを嬉しさとして得ることが出来ると考えています。
①に関しては、現場にて手作業で収集・集計していたデータをTableauで自動収集して見える化すること等により、作業時間の削減や業務の自動化(必要な時にすぐ情報を確認出来る)の事例が多く出てきています。
②に関しては、これまで見ていなかった長期間のデータや複数のデータの掛け合わせにより、多くの気づきを得ることが出来るようになってきています。さらには、Tableauの機能で得られたレポートやダッシュボードを素早く他の人と共有することが出来るので、様々なところでコラボレーション(③)が進んできています。

このような嬉しさを皆が感じてもらえるようにするために、安心して使える環境づくりを進めています。特に力を入れているのが“教育”と“コミュニティ(繋がり)作り”でして、社内で学ぶことが出来るように教育プログラムを独自に構築し、社内講師による定期的な勉強会を開催しています。また、繋がりを作るためのイベントとして「Tableau Day」というものを開催しており、社内外の様々な事例を知り今後の活用に繋げてもらうための取り組みも進めております。

photo
社内勉強会やイベント「Tableau Day」の様子

社内勉強会やイベント「Tableau Day」の様子

今後はより各部門での活用並びに全社においてデータで繋がる姿を作っていくことにより、全体最適でのデータ活用を進めていき、一人一人がよりデータに基づく意思決定を高速で出来るように進めていくことで、業績に寄与すると共に働きやすい環境とするべく、さらに推進をしていこうと考えています。

Tableau活用事例

Tableauを活用することによって得られた効果は時間に換算すると年間10万時間を超えています。多くの活用事例が出ておりますが、製造現場における活用事例についてご紹介します。

現場では日々の生産実績等を様々なシステムから手作業で集計しExcelにまとめる業務を行っていました。毎朝の会議で使用するものですが、限られた時間の中で業務を行わないといけないため負担になっており、入力ミスのリスクもありました。

それを改善するために、Tableauを導入してシステムと連携させることで、自動的に必要な情報全てがTableauで見えるようになりました。自分たちで見たい切り口で画面を作成することにより、情報を即時に手に入れることが出来るようになったのです。それによって、業務効率化に繋がったのはもちろんですが、そのデータを使っていた日々の会議の在り方も変わりました。これまでは会議の中で実績の報告をする時間が主だったのですが、全員がTableauを見られるため、実績等の情報は見れば分かる。なので、その結果をうけて今日・これから何をしなければならないのかというアクションを検討する協議の時間を多く取るようになったそうです。

RPAの推進

  • 住友ゴムグループ

当社におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の位置づけは2つあり、①『デジタル経営で必要なアプローチ』、②『従業員体験の向上』です。

①に関しては、RPA化を通して、当社での事業活動(商品企画から製造、メンテナンス、販売)の業務基盤、特に定型業務の自動化または整流化(標準化やルール化)を行い、再構築をしていくことがデジタル経営を推進していくために必須と考えています。

②に関しては、単に労働時間の削減だけで無く、労働の質の向上もあわせて目指すため、RPAを働き方改革の本丸と位置づけています。

このような2つの位置づけからRPAの導入が必要とされ、2018年4月から管理部門の5業務のRPA化を進め、その効果や価値の検証をスタートしました。

社内での反響が高かったこともあり、RPA導入対象の拡大を図るべく、2019年4月に「RPA推進室」を人事総務部傘下に新設し、現在は「人事総務本部 総務部 RPA推進グループ」として、RPA推進の業務にあたっています。その役割は、単に現状業務をRPA化する事だけでなく、RPA化のアプローチを用い、業務の整流化や既存システムの改修等による解決策を提案し、その実行をサポートすることです。

さらに、2020年からRPAの普及・浸透を加速させるため、従業員によるRPA開発を推進しています。従業員へのRPA開発研修を通してRPA開発スキルとともに業務整理スキルもあわせて教育しており、各従業員が業務効率化と自身のスキルアップを実感し、より高度な業務へシフトできるよう、従業員の体験向上につながる活動を進めています。

RPA導入事例

  • 住友ゴムグループ

2023年5月末時点で、当社で導入したRPAロボは約590体で、削減効果は年間約66,400時間です。

そのなかでも、特に従業員体験の向上に寄与したRPA事例は、ゴルフボールの開発の過程において、ゴルフボールにとって重要な『どのように「飛ぶ」のか』を分析するために、マシンによる測定データや人が打ったときの感触などを数値化したデータを収集・集計する作業です。分析のために必要な数値データを表にまとめ、グラフ化する作業にRPAを導入したところ、月に50時間程度要していた膨大なデータを扱う手作業が、ワンクリックする(RPAを起動させる)だけの業務に変わり、月12時間まで削減できました。そのうえ、納期に追われることがなくなったことで精神的にも余裕ができ、これまでは分析に手一杯で携われなかった商品開発にも参加できるようになりました。

グラフ:RPAによる業務削減時間

RPA推進グループのビジョンは『変われる経験を提供し続ける』です。
ビジョン実現のための5つの要素として、『当たり前・思い込みに気付く機会をつくる』、『不合理・不整合を発見して解消する』、『人・部署・システムのつながりを促進する』、『負担感を軽減する』、『Capacity Capabilityをつくる』を位置づけています。従業員にポジティブな変化体験を提供することで、社内業務基盤強化と職場風土の活性化などにつなげていきます。

RPA導入によって生まれた時間で、商品開発会議に参加する担当者
RPA導入によって生まれた時間で、商品開発会議に参加する担当者